東京本社に転勤になって最初に行ったのが烏山線の下野花岡駅だった。宇都宮駅で電車を乗り換えると、地元の高校生が大勢乗っていた。彼らの話し声のイントネーションは独特のものであった。私は遠くに来たことを実感した。距離的には東北や九州のほうが遠いのだが、関西人の私にとってこの言葉は今まで聞いたことがないものであった。東京本社に転勤になったのに、私はまるで都落ちした気分になってしまった。宝積寺駅でおりて歩いてたどり着いたのが下野花岡駅であった。この駅には申し訳ないが都落ちにふさわしい田んぼの中にぽつんとあるホーム一面だけの簡素な無人駅だった。
なおこの駅は、私が訪ねた時は「しもずけはなおか」との表記であったが、現在は「しもつけはなおか」の表記になっているようである。
(1986年6月8日撮影)