春というよりも初夏の気候となった休日に出かけたのがこの駅への旅であった。姫路駅で姫新線の列車に乗り換え、上月駅でおりて歩き始めた。途中、兵庫県(播磨)と岡山県(美作)の県境を越えた。少し汗ばむ陽気だった。私は道路わきの草むらに座って握り飯を食べた。その頃の私は、山頭火の俳句に傾倒していた。山頭火の奔放な旅とその生き様に甘い漠然としたあこがれのようなものがあったような気がする。
今となっては山頭火のような生き方は私にはできないことは身をもって分かっているが、あの当時の私は山頭火の真似をして満足していた。まだ若くて夢の世界に生きていた私だが、あの当時の自分が今は理屈抜きで愛おしい。
きょうのおべんたうは草の上にて
しみじみ食べる飯ばかりの飯である
分け入っても分け入っても青い山
(山頭火)