HHD’s blog

線路のある風景

さよならはるちゃん

 母が亡くなった。97歳の誕生日を間近にしてのことだった。施設で看取り介護に入ってからは、いつその時が来ても良いように心の準備をしていたが、あっけなくその時は訪れた。日曜日の深夜に施設から電話があり、母が亡くなったことを知った。翌朝、施設に行き母と対面。母は穏やかな表情をしていた。不思議と涙は出てこなかった。ただ妻は涙を流していた。妻と母とは生前あまり折り合いは良くなかった。なので私は少し意外な気持ちになったが、妻がつぶやいた一言が私の胸につきささった。

「もう喧嘩できなくなってしまったね。」

 東京から息子がかけつけて、家族3人だけで葬儀を行った。母の顔に手を触れるとひどく冷たかった。生前好きだった花をいっぱいに詰めた。私は心の中で「長い間お疲れ様でした。」とつぶやいた。そして妻と私が言っていた生前の母のニックネームを最後につぶやいた。

「さよならはるちゃん。」