この当時、私は東京のコンピューター関連の会社に勤めていた。この旅の当日は大雨だった。この旅は房総半島を一周し、歩く距離も比較的長かったので、私は旅を延期しようかと考えたが、独身寮でじっとしているのも苦痛だったので出かけることにした。
千葉駅を過ぎたあたりで雨がやみ、大原の駅に着いた頃には薄日が射し始めた。私の後ろの座席に座っていた二人連れの旅行者とおぼしき女性のひとりが「奇跡の晴天」とつぶやいたのが今でも私の記憶に残っている。上総興津駅でおりて歩き始めたが、雨の中を歩くことを覚悟していたので、うれしい誤算となった。国道を歩いたが途中トンネルがあり、通り抜けようとしたが風の音なのか何か不気味な音がトンネルの中から聞こえてきたので、私は海沿いの迂回路を選択した。この手の恐怖感を体験したのはこの旅が初めてだった。そして後で知ったのだが、私が歩いたあの海沿いの迂回路は心霊スポットで有名な「おせんころがし」であったようである。
(途中にあった船着き場)
(1986年7月12日撮影)