HHD’s blog

線路のある風景

旧国名の付く駅を訪ねる旅(尾張一宮駅)

尾張一宮駅

 この日は暑かった記憶がある。尾張一宮駅で写真を撮ったが、いつものように歩くのでもなく、物足りない旅で終わりそうな感じであった。そこで私は旅にアクセントをつけるため、帰りは名古屋から関西線を使うことにした。

 亀山駅で奈良行の各駅停車の列車に乗り換えた。当時は優等列車以外は非冷房の車両が主流で、私は窓を全開にして景色を眺めていた。夏草の強烈なにおいを含んだ生温かい風が顔に容赦なく吹き付けてきた。笠置駅を過ぎて、列車は木津川の流れにそって走っていた。その時であった。木津川の流れのはるかかなたにみえる山々があざやかな夕焼け空にその稜線をくっきりとみせていた。はるか昔の万葉の時代の人々もみたかもしれない原風景、荘厳なまでの幻想的な美しさに私はただただ見とれてしまい、写真を撮ることも忘れてしまった。あれから何度も旅をしたが、あのときの景色をこえる車窓風景に私はまだ出会っていない。

 

 

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(ホームに停車中の165系電車) (1984年7月29日撮影)