この当時、大阪に住んでいた私にとって、四国は近場のイメージが強くいつでも行ける場所であると考えていた。そのようなこともありなかなか出かけられないでいた。
この旅は高徳線の讃岐相生駅から、香川県と徳島県の県境をこえて、阿波大宮駅まで歩くものであった。鉄道の営業キロだけをみると5.6㎞しかないのでそれほどの距離にはみえないが、鉄道はトンネルで距離を節減しているが、私が歩く予定の県道は曲がりくねった昔ながらの峠道で、距離にすると鉄道の2〜3倍になるのではないだろうか。
冬晴れの穏やかな讃岐相生駅をスタート。最初は足取りも軽かったが、曲がりくねったどこまでも続く峠道に少しづつ体力を奪われていった。歩いても歩いても曲がりくねった道が続いた。しかし、はるか眼下に海がみえるようになると気分も少し楽になった。私は休憩し、前日に出席した会社の同僚の結婚式の引き出物にもらった紅白饅頭を食べた。冬の峠道で食べる紅白饅頭は独特の味がした。私は熱いお茶が飲みたくなった。香川県(讃岐)と徳島県(阿波)の県境を通過したときは少しほっとしたが、ここから先の道のりも長かった。
目的地の阿波大宮駅に着いたのは、冬の陽が少し傾き始めた頃だった。阿波大宮駅は山間の静かな感じの良い駅であった。次の列車が来るまでの時間、疲れた足を休ませた。駅には私以外だれもいなかった。私は眠くなってすこしウトウトしたような気がする。そんなこともあってか、私はこの駅から高松方面行の列車に乗ったのか、それとも徳島方面行の列車に乗ったのかまったく記憶がない。
(讃岐相生駅前からスタート)
(峠道からみえた海)
(居眠りをしてしまった阿波大宮の駅舎) (1986年2月8日撮影)