この頃の私は、正月休みは実家でのんびりと過ごすのが習慣となっていたが、せっかくの長い休みを利用しないのはもったいないと考え、旅にでた。豊岡駅前のビジネスホテルに荷物をおいて、私は城崎温泉の外湯に入りに行った。豊岡駅から乗ったのは、ディーゼル機関車がけん引する古い客車列車であった。次の玄武洞駅に着くと、完全な静寂が車内を支配した。時が止まったような錯覚を感じた。外は一面の雪景色。冬の旅の旅情を私は体全体で感じた。
翌日、ビジネスホテルから歩いて着いた但馬三江駅は雪ですっぽりと覆われていた。
私は現在、腹膜透析も行っており、公衆の浴場には入れない。そんなこともあって今から考えると何と贅沢な旅をしたのだろうと、私は過去の自分に嫉妬している。
(1985年1月3日撮影)